こうの史代さんと言えば、「この世界の片隅に」がとにかく有名になってしまいましたが、私は「夕凪の街 桜の国」を強く推します。
一作だけ推薦できる漫画を選べと言われたら、即座にこれを選びます。
前に映画化されたことがありまして、正直、内容にガッカリしました。「夕凪の街」の部分が特に。皆実が死ぬ場面が綺麗すぎて、唐突な死の理不尽さが薄れてしまいました。「桜の国」は悪くはなかっただけに残念。
ただでさえ実写化は失敗例の方が多く、こうの史代さんの作品は漫画ならではの表現が特徴の一つなので余計、不安が募るわけです。たとえば、七波と東子が洋装店(夕凪の街にも出てくる)の前を通り過ぎる場面から旭と京花が洋装店の前に佇む場面への転換など、表現の巧みさを挙げ始めたらきりがありません。
クラシック音楽のようにファンの数だけ心の中に理想形があるとなると、その全てに合わせるのは絶対に不可能です。なのである程度は妥協するか、いっそのこと観るのをやめるかするしかないのかもしれません。
さて、今回Amazon Primeで観た、NHK広島が制作した「夕凪の街 桜の国2018」ですが・・・
素晴らしい!!!
原作との違いは
- 現代パートは2004年から2018年に。
- 桜の国(一)はすべてカットされて東子の出番はなし。
- 凪生と東子の娘の風子が東子の代わりに登場。
といった感じ。桜の国(一)がカットされたのは残念ですけど、まぁ、予算や時間の制約があるんでしょう。
まず素晴らしいと思ったのは、役者さん達の演技ですね。全員素晴らしい。特に印象に残ったのは、原作では一コマだけ出てきた打越役の佐川満男さん。現代パートでの出番が増えたのは良いアレンジでした。川栄李奈さん、小芝風花さんも素晴らしかった。
あと良かったのは演出面。原作はコミカルな要素が随所にあって必要以上に重苦しくさせていないのですが、ドラマでは、原作では3コマで描写されていた、旭が京花にプロポーズする場面(3秒以内に現れた人を嫁にするという下り)で老婆や老人、牛が通りかかる描写をして、原作や原作者の作風を深く理解していることが伺えました。
脚本も、桜の国(一)を端折った部分をうまく補い、独自に追加した部分も違和感がなく非常に良い仕事をしています。これぞプロの仕事。安心して観られる作品のありがたみを痛感しました。(某宇宙戦艦のリメイクが酷すぎただけに)
一つだけ不満があるとすれば、旭の広島行きの動機ですかね。原作では皆実の五十回忌だからという理由がありましたが、ドラマではそこが弱くなってました。
なにはともあれ、100点満点で90点はつけられるドラマだと思います。
桜の国(一)を端折らない完全版のドラマかアニメが制作されたらな~。
ほなほな。