今回は本編の感想になります。
インタビューでは
といったことが語られていました。もっとも、福井晴敏氏の大言壮語には散々萎えさせられてきていたので、期待はしていませんでした。
ていうかね、福井晴敏氏には言いたいことがあるんです。
現代の写し鏡とかどうでもいい
まず、娯楽作品として成立するものを作って、その中に社会批判なり社会風刺を混ぜなさい。
そもそも、「現代の写し鏡」って何ですか? 私やこれを読んでる皆さんが鏡を見た時、そこに映るものは同じですか?
福井氏は声優の山寺宏一氏との対談で、毎年のように宇宙人が攻めてくるヤマトの世界と、災害が頻繁に起きる現代との類似性について語っていますが、たとえば東北の震災で、
- 被災した方(自宅も失った)
- 被災した方(自宅は残った)
- 被災した方(家族を失った)
- 被災した方(家族は無事だった)
- 被災した地域にいた方
- 被災した地域に行った方(ボランティアなど)
- 被災していない地域にいた方
それぞれが震災で感じたものや経験したことには、埋めがたい差があります。それは震災の二ヶ月後に現地にボランティアとして行き、過ごした経験からわかります。被災していない地域にいて、テレビやメディアを通して被災地を観た人たちが、現地にいた人たちが視覚、触覚、嗅覚で感じたものを共有するのは非常に難しいと思います。
福井氏が対談で使った言葉を借りれば、「肌身で感じ」ることなんてできないんですよ。そんなに世界は、現実は、単純でもなければ甘くもない。この部分で勘違いをしている間は、彼が関わる作品はろくなものにはならないでしょう。
では、ネタバレありの感想いきます。
1969年云々というのはアポロ11号の発射シーンのみ。続いて、第二次大戦後の地球では大きな戦争が起きず、鎮魂の意味で海底に沈んだ戦艦大和を引き上げて、改修して、また沈め・・・いや、その頃、どれだけ技術が進歩したかわかりませんけど、腐食崩壊が進んだ大和がその頃、どんな状態になっているかを考えたら、コストがかかるなんてもんじゃありません。さらに、それを改修って。(笑) ゼロから作った方が早いでしょうに。
「旧作ではヤマトは大和の中に作ったが、実際は大和はバラバラの状態だった」 その矛盾を解消するアイデアとしては、極めて安易だったと言わざるをえません。改修した大和が2199年にあそこまでボロボロになったのは何故かという疑問も生じます。ここはあえて描かないでも良かったと思います。描くなら、大和がどんな存在なのか掘り下げないと。
続いて、火星への進出と内惑星戦争の描写。地球では戦争が起きなかったのにあっさりと戦争が起きたんですね。そこは置いておくとして、ここはもっと尺を取っても良かったかと。異星人の技術を取り入れた火星側との戦いはもっと掘り下げてほしいと思える出来でした。この部分に関しては絶賛します。若い頃の沖田さんや土方さんとかを出しても良かったかも。
2199パートも素晴らしいの一言。第二次火星沖海戦は特に素晴らしく、新規に追加した部分も2199テイストで文句なしの出来でしたね。このあたりまでは、尺の短さを感じつつも、それなりにドキュメンタリータッチで2202の汚名返上と言っていい内容になっていました。時間にして、ここまででだいたい30分くらいでした。
2202パートにに関しては、ただの総集編になってました。岩から巨大戦艦が出てくる部分はカットされてましたけど、250万隻の巨大戦艦や病的なひし形メドレー、タコみたいな都市帝国、大量のロボに支えられて波動砲を撃つヤマト、クルーに子供を産ませるG計画、銀河の強力でパワーアップした波動砲とキーマンの特攻でも復活する方舟のコアなどはそのままでした。
2202で何を描きたかったのかは本編より伝わってきました。縁が和を生み、その力で敵に立ち向かうのは悪くないです。だがしかしで、古代や真田が2199とは性格が変わってしまったのは本当にいただけません。古代なんかUCのバナージと同じですからね。既存ファンにとっては2199とテイストが悪い方向に変わってしまったことを改めて確認しただけで。
2199パートまでは素晴らしい出来だっただけに、60分ほどかけた2202パートが単なる総集編になったのは残念でした。デザインや一部の描写以外は否定できないということかもしれません。
距離的、技術的なヤマトの旅の困難さの描写を追加したり、説明不足な部分を補足することにもっと力を入れていれば、新規ファン向けな内容になったでしょうね。大和がヤマトになった意味など、もっと描きようはあったはず。脚本家の力量不足ですね。
2199パートまでは100点満点で85点、2202パートは3点といったところでしょうか。
次回は「閃光のハサウェイ」のレビューを書く予定。
ほなほな。