今回は1973年に発表されたアルバム、”There Goes Rhymin' Simon”についてあれこれ書いていきます。
Paulはどちらかというと寡作な方なんですが、これは前作の翌年に発表されました。よほど充実してたんですかね。
収録曲は下記の通り。個人的に好きな曲、良いと思う曲は赤字にしてあります。
- Kodachrome
- Tenderness
- Take Me to the Mardi Gras
- Something So Right
- One Man's Ceiling Is Another Man's Floor
- American Tune
- Was a Sunny Day
- Learn How to Fall
- St. Judy's Comet
- Loves Me Like a Rock
このアルバムの特徴の一つとして、プロデューサーが盟友Roy HaleeからPhil Ramoneに代わったことが挙げられます。
PaulはRoyと組むつもりだったんですが、RoyはArt Garfunkelのソロアルバムの制作に時間を取られていて、完成直前にArtが旅に出てスケジュールが読めなくなったために交代したんだそうです。
Phil RamoneはBilly JoelやBob Dylanと組んで数々の名盤を出した名プロデューサーで、マンネリを嫌うPaulにとってはRoyと組めなかったことは逆に良かったのではないかな~と勝手に思っていたり。
1と10をはじめとする半分くらいの楽曲はMuscle Shoals Rhythm Sectionと組んで録音したもので、ソウルやゴスペルがうまく取り入れられてます。アレンジの巧みさも
このアルバムの中で一番好きなのは2の”Tenderness”です。50年代っぽいサウンドとアレンジも良いのですが、特に好きなのは歌詞です。Paulの曲はたまに英語が母語じゃないのに入ってくることがあって、これもそのうちの一つです。
6の”American Tune”はPaulのソロにしては珍しくアコギで弾き語りができる曲で、S&Gっぽさがあるからか、人気があるみたいです。S&Gの再結成でやったバージョンが素晴らしいと言う人が私の周りにもけっこういます。
Simon & Garfunkel - American Tune (from The Concert in Central Park)
私はS&G版は大嫌いですがね。
声とハーモニーは綺麗だけど、ただそれだけ。当時、アメリカの大統領選でRichard Nixonが勝った絶望感から生まれた歌詞なのに、聴きやすさの代償に大事なものが抜けてしまったような印象を受けます。シリアスさがないというか。
こっちの方が伝わるものがあって断然良いです。
Paul Simon - American Tune (1975)
Paulはジャンル的に何の人なのかというと、それはフォークではないんです。彼のヒーローは50年代のロックスター達で、デビュー曲はこれですから。
Hey, School Girl by Tom and Jerry 1957
核になるのはビートで、Paulの一連のソロアルバムは世界中の音楽のビートの博覧会みたいな感じになってます。50年代に生まれたロックンロールの後継であり発展形の一つ、と言っても過言ではないはず。
そういえば、ニコンのカメラに興味を持ったのはこの曲がきっかけでした。Paulは”ナイコン”と発音してますが。
次回は1974年に発表されたライブ盤の紹介をする予定です。
ほなほな。